動物組織の固定方法について  満嶋 明                                                        


 電顕で組織や細胞を観察する時に、始めに行う操作のひとつに「固定 fixation 」があります。これがなかなかに奥が深い問題で、初心者には難しい所です。透過電子顕微鏡を用いて動物組織の超薄切片像を観察する場合の固定について、少しだけ解説をしておきますので、学習の第1ステップとしてお読み下さい。超薄切片法ばかりでなく、走査電子顕微鏡を用いての観察の場合にも必要な知識となると思います。「そうか、固定とはこんな作業なのか?!」という感想をお持ちになる程度で宜しいと思いますので、気軽にどうぞ!

 

   


 

目次:

 1)はじめに

8)固定液の温度について

 2)取りあえずの固定液処方箋

9)固定方法について

 3)アルデヒド固定液について

10)アルデヒド固定の後の洗浄について

 4)緩衝液について

11)オスミウム後固定について

 5)浸透圧について

12)固定条件の記録について

 6)添加物について

13)おわりに

 7)固定時間について

 

 


 

1)はじめに:             【目次に戻る】

 固定をするにしても、固定剤の種類、濃度、緩衝液、浸透圧など、どうしたら良いのか迷ってしまいます。グルタルアルデヒド glutaraldehyde(以下、GA)、フォルムアルデヒド formaldehyde(FA)がよく使われていますが、論文などを読み漁ると、使われている濃度や比率が観察対象によって全く違います。どうして濃度が異なるのか考察に述べられているケースは少ないですから、初心者には理由が分かりません。灌流固定がいいのか浸漬でもいいのか、灌流が出来ないときにはどうしたらいいのか、などの質問もよく聞かれます。浸透圧なども重要だと教科書に書いてありますが、ではどの浸透圧が「正しい」のかは書いてありません。

 実は、固定方法に「これ1本」というオールマイティな方法は存在しないのです。観察対象が異なれば、最善の固定も異なってくるのです。また、同じ試料を観察電するにしても、透過型電顕(TEM)と走査型電顕(SEM)では固定法は異なります。では、一体どう固定すればよいのでしょうか?ここでは、超薄切片法の固定について述べることにします。ここを基本的な第1歩として、学習をはじめていって下さい。

 

2)取りあえずの固定液処方箋:         【目次に戻る】

 ひとまず、超薄切片法(TEM)のための3つの固定液処方を書いておきます。これが「正しい固定液」という意味ではありません。上にも書きましたが、オールマイティな固定法は無いのです。しかし、はじめてのサンプルを手にしたとき、何も出来ないのは困りますから、試しに使ってみるための処方です。もし、この固定液で「適切な固定」が出来れば今後もこれを使えば良いのであり、逆に何か不都合があれば改善していくという風に考えて下さい。 

   表:固定液の処方箋(例) 
 1)2%GA+2%FA
                           
         
 
      
 
 25%GA :  8ml
  8%FA : 25ml
 リン酸緩衝液: 68ml
 ---------------------------
      総量100ml
 
  (総浸透圧:ca.1,100 mOsm)
      

 

 2)1%GA+1%FA
                           
         
 
 
         
 25%GA :  4  ml
  8%FA : 12.5ml
 リン酸緩衝液: 83.5ml
 ---------------------------
      総量100  ml
 
  (総浸透圧:ca.640 mOsm)
      
 3)2%GA単独
                           
         
      
         
 25%GA :  8ml
 リン酸緩衝液: 92ml
 ---------------------------
      総量100ml
 
  (総浸透圧:ca.400 mOsm)
      

  ●25%GAは市販のものを使って下さい。

  ●8%FAは、paraformaldehyde という粉末を溶かして作成します。

   作り方は、下の表を見て下さい。

  ●緩衝液は、ここでは0.1M リン酸緩衝液(pH 7.4)にしておきます。

 

  表:paraformaldehyde粉末 からformaldehyde溶液 を作る 
 
●8%のフォルムアルデヒドを作ることにします。
 
 1) 三角フラスコに50〜60mlの蒸留水を入れておきます。
 2) パラフォルムアルデヒド粉末8gをフラスコに入れて下さい。
   粉末は全く溶けませんが、フラスコを振ってまぜて下さい。
 3) フラスコを沸騰したお湯の中に入れます(湯煎状態になります)。
   中の蒸留水が温まるまで1〜2分待ちます。
 4) 1N程度の水酸化ナトリウムを少量用意します。
   1〜2滴の水酸化ナトリウムをフラスコに落として、
   まぜながら1分待ちます。かなりの粉末が溶けてきます。
 5) 再び1〜2滴の水酸化ナトリウムをフラスコに落として、
   まぜながら1分待ちます。
   完全に粉末が溶けるまで続けて下さい。
 6) 完全に溶けたら、少量の蒸留水を注ぎながら、フラスコの縁に
   付いた粉末を中に落とし込んで下さい。
 7) フラスコを水道水で冷却します。
 8) ぬるくなったら中の溶液をメスシリンダーに移し、
   蒸留水を加えて100mlにしたら、出来上がりです。
 
●使用直前に調整することをお勧めします。
 
 保存しておくと蟻酸(組織を破壊します)を生じて
 とんでもない固定結果になることがあります。
 市販のフォルムアルデヒド水溶液(フォルマリン)を用いずに、
 わざわざパラフォルムアルデヒド粉末からフォルムアルデヒドを
 作るのも、このような理由があるからです。
 

 

 

3)アルデヒド固定液について:         目次に戻る】

 GAもFAもアルデヒド基を持っている「アルデヒド固定剤」です。アルデヒド基がタンパク質などに結合します。GAは2つのアルデヒド基、FAは1つアルデヒド基を持っています。いづれも架橋という現象によって分子を巨大化して、分子の移動を防止したり、酵素などの活性を阻害して細胞の変化をくい止めることが出来ます。これがアルデヒド剤による「固定」ということになります(さらに詳しい固定機序については成書をお読み下さい)。

 GAは2つのアルデヒド基を持っているためか、FAに比べて非常に強い固定力を持っています。GA単独固定とFA単独固定の超薄切片像を一度作ってみれば、その固定力の差に驚かれると思います。次に、FA単独固定とFA単独固定液に0.1%の割合でGAを加えた物とで、その像の違いを比較してみて下さい。わずか0.1%でもその大きな効果に目を見張ることでしょう!

 ですからGA単独固定(表の3番目)でも、充分な固定を行うことが出来るはずです。固定力の強いGAですが、難点は浸透速度がとても遅いのです。私の経験では1時間に1mm程度かと思います。GAが目的の細胞に到達する前に、細胞は変化を起こすことが十分に考えられます。逆に、FAは固定力は弱い物の浸透速度はGAの数倍と考えられています。GA固定液にFAをまぜることによって、双方の弱点を補いあうことが出来るのです。GA/FA混合固定液はカルノフスキー(Karnovsky, 1965)が考案しましたので(5%GA+4%FA)、「希釈カルノフスキーを使用」などと今でもカルノフスキーの名称が通っています。

 アルデヒド固定を行った組織では特にタンパク質が固定されているのですが、膜の半透性は生き残っています。また、一部の酵素活性や免疫学的活性も残ります。これらの生物学的活性を完全に止めるには、後固定の四酸化オスミウムを使わなくてはなりません。つまり、四酸化オスミウム処理までは使用する溶液の浸透圧やpHにも気を配る必要があるということになる訳です。また、酵素活性や免疫学的活性の局在などを観察したい場合には、四酸化オスミウム処理の前に適切な処置を施すことになります(組織化学法、免疫組織化学法)。酵素活性や抗原性の固定(失活)はGAの方が強いので、”GAは酵素活性や抗原性の「保存が悪い」”という風に一般的に表記されます。逆に、FAは「保存がよい」ことになります。

 GAは保存中に重合体を生じることが知られています。これは固定力が弱くなることになりますし、pHがかなり低下します。研究者の中には、重合体を除去して用いる人もいます。しかし、やや暴言になってしまいますが、初心者の間は重合体のことを気にせずに、とりあえず、そのままGAを使っても良いと思います。GAはわずか0.1%でも固定効果が現れると書きましたように、2%程度の濃度を用いていれば充分な固定力があると考えられるので、重合体のことをとりあえず忘れても良いと思われるのです。固定に問題が生じたときに、GAの品質のことを思い出すと言うことに致しましょう。

 

 

 

4)緩衝液について:                目次に戻る】

   

 固定中に大幅にpHが変化しないように緩衝液を必ず用いて下さい。緩衝液は非常に奥の深いもので、理論や応用などを述べるとすると分厚い本になるくらいです。ですが、ここでは、一般的なリン酸緩衝液とカコジル酸緩衝液に留めておきましょう。

 緩衝液を選ぶ場合に最も重要な知識は、緩衝液を変えることによって得られる画像が変わってくるということです。固定の状況が異なると言っても良いかも知れません。感覚的な表現にして申し訳ないですが「カコジル酸の方が細胞質をより良い状態で保存する気がする」という感じです。「リン酸の方が、細胞質が明るく固定される」とも言えましょうか。通常の観察ではどちらを用いても良いと思いますが、何か問題が生じたときに「緩衝液を変えてみる」というのも大事な選択肢であることを覚えて置いて下さい。何も問題がない場合には、リン酸緩衝液をお勧めします。

 リン酸緩衝液には、Soerensenの処方(2種類ある)とMillonigの処方(2種類ある)がありますが、どれを使っても構いません。Soerensenの第1処方(リン酸2ナトリウムとリン酸1ナトリウムを使用)を用いている人が多いようですが、私はSoerensenの第2処方(リン酸2ナトリウムとリン酸1カリウムを使用)をもっぱら愛用しています。どうしてかというと、「インスタント・バッファー」といって、調合済みの粉末が1袋に入っていて、一定の量の蒸留水に溶解するだけであっという間に緩衝液がつくれるものが市販されているからです。

 電子染色として酢酸ウラニルのブロック染色を行う場合にはリン酸緩衝液を使用することは避けた方が無難です。リン酸とウランが結合して、ものすごいコンタミネーションになります。ブロック染色の前に蒸留水などでリン酸緩衝液を充分に洗ったつもりでも、残ることが多いので、ブロック染色を予定している場合にはカコジル酸緩衝液を用いて下さい。ただし、カコジル酸緩衝液を用いるときの注意点は、何と言っても「ヒ素」を含んでいることです。決して下水に流さないようなルールを作ってから使用することにいたしましょう。廃液処理設備の整っていない所では使用しないように致しましょう。

 今から電顕試料を作製する人であれば、とりあえずリン酸緩衝液を使ってみて下さい。pHの安定度もよく、毒物が入っていないので使いやすいと思われるからです。何か特別な理由があれば(ウランのブロック染色など)、カコジル酸を選択して下さい。

 さて、緩衝液の濃度ですが、0.1〜0.2M程度を用いている研究者が多いです。緩衝作用が及ぶ濃度であればどの濃度でも良いのですが、総浸透圧との兼ね合いで0.1〜0.2Mを用いているのでしょう。

 pHについては、体液にあわせるというのが基本です。哺乳動物の場合には、pH7.2〜7.4の間で調整して下さい。

 

 

5)浸透圧について:              目次に戻る】

 これも非常に奥の深い問題です。固定液全体の浸透圧(総浸透圧)だけでなく、固定剤の浸透圧や溶媒の浸透圧も気にしなくてはならない場合もあります。哺乳動物の血液の浸透圧は、およそ280 mOsm(単位はミリオスモルと読む)と言われています。しかし、等張固定液で固定した組織はほとんどの場合、膨張してしまいます。つまり、低張液処理の効果が現れてしまいます。溶媒を等張にして固定液を調整すると、必ず高張固定液になるのは当然ですが(2%GAの場合は、約480mOsm)、かなり良い固定像を得ることが出来ます。さらに高張な固定液を用いれば、組織は収縮像を見せます。上にあげた固定液処方では総浸透圧を示しています。どれも「やや高張」な固定液となっていますが、多くの研究者はこの程度の浸透圧の固定液を用いています。

 浸透圧調整で難しいのは、細胞小器官によって適正な浸透圧が異なる場合(ミトコンドリアなど)と、同一器官であっても細胞の種類によって適正な浸透圧が異なる場合です(腎臓の尿細管など)。固定液の浸透圧が適正かどうかは、撮影した電顕写真を専門家に見ていただくと良いでしょう。

 

 

6)添加物について:               目次に戻る】

 固定剤、緩衝液の他に固定液に種々の添加物を入れる場合があります。最も多いのは浸透圧を調整(上げる)ためにショ糖、ブドウ糖、食塩などを入れることでしょう。次には2価のイオン(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、等など)の調整です。逆に2価のイオンを除去するような添加物を入れることもあります。2価のイオンの調整も奥が深いです。多少の学習が必要になりますので、折に触れて成書を読むようにして下さい。

 灌流固定の場合には、固定液を注入する前に生理的食塩水などを流して血液を除去する(脱血といいます)ことが多いのですが、血液凝固防止のためにクエン酸ナトリウムやヘパリンの添加も行ったりします。0.9%塩化ナトリウムの代わりに、0.8%塩化ナトリウムに0.1%のクエン酸ナトリウムを加えた物を使ってみて下さい。また、生理的食塩水ではなく、リンゲルやタイロードなど2価のイオンに留意したものを流す必要がある場合もありますし、時には酸素を入れたタイロードを灌流することもあります。それぞれ観察目的に従って、調整がなされます。電顕試料作製法に慣れてきたら、これらの添加物についての学習を必ず行って下さい。

 

 

7)固定時間について:              目次に戻る】

 バルク使用の場合(厚さ1mm以下)、おおよそ2時間というのが最小時間としておきます。灌流固定ならば15〜20分灌流しておいてから試料を細切し、さらに90分ほど浸漬します。組織によっては浸透の遅いものもありますから、多少加減して下さい。これを最小時間としますが、もちろん固定液に1晩漬けておいても良いわけです。

 アルデヒド基によって架橋されるべきタンパク質が完全に固定されるためには、おそらく数日を要すると予測されます。つまり、「固定は進む」ことになります。となると「完全」なアルデヒド固定を行うことを前提すると約2時間というのでは不充分です。しかし、電顕観察のための固定となると、ある程度架橋されていないタンパク質があっても大きな支障にはならないようです(事と次第に依りますが)。要は可視化されうるべき構造物が変化したり、移動したりしないことなのです。

 では、どれくらいなら保存しておいても良いものでしょうか?残念ながらオールマイティな答はありません。でも、アルデヒド固定後は、なるべく早くオスミウム後固定に移した方がよいと思います。前にも書きましたが、アルデヒド固定だけでは細胞の一部は生きているのです(膜の半透性や酵素活性、など)。またアルデヒドでは固定されない物質もたくさんあります(糖タンパクやミエリン、等)。固定液に漬けておくことによって「不変」のような感じがしますが、実はいろいろな物質が流失したり、変化したりします。また、アルデヒドが重合体を形成し、pHが低下して構造を破壊することもあり得ないことではありません。ですから、なるべく早くオスミウム固定に移りたいのです。そうですね、「1週間くらい迄」を目途にすれば良いかも知れません。

 病理組織などで1年以上固定液に漬けた試料でももちろん電顕観察は可能です。その場合には、「何が固定されて残っており、何が固定されずに流失しているか」を検討しておくと良いと思います。

 もし、動物を灌流固定するのであれば計画が立てられますから、灌流の翌日〜翌々日にオスミウム固定に移れるようにスケジュールを組んで下さい。

 

 

8)固定液の温度について:           目次に戻る】

 室温で固定する人、4℃(氷水)で固定する人など様々です。観察目的によって固定温度が重要な因子になる場合と、そうでもない場合があると思います。何回も反復して試料を作製するのであれば、再現性を重視して常に同じ温度で固定することが良いでしょう。一定温度と言うことであれば、氷を浮かべた水の中に「固定液と試料を入れた試料瓶をいれておけば、ほぼ4℃を保つことが出来ます。低温を用いるのは、酵素活性を押さえて固定液が充分に浸透するまでの間に変化を少なくするという意味があります。

 

 

9)固定方法について:             目次に戻る】

 灌流固定が絶対に良いです。灌流固定が適用出来ない場合に浸漬固定になります。浸漬固定の場合は、なるべく試料を小さく切ってください。そして、急いで固定液に投入して下さい。生の組織をカミソリで切ることになりますから、切った周辺は必ず組織が破壊されています。試料の周辺部は決して観察に用いないで下さい。浸漬固定での最大の欠点は、固定液が目的の細胞に到達するのに時間が掛かると言うことです。この間に細胞内が変化を起こします。構造変化を起こす、物質移動を起こすなどです。これを避けるには、試料を小さくして、固定剤がはやく浸透するようにするわけです。

 

 

10)アルデヒド固定の後の洗浄について:    目次に戻る】

 十分に残存するアルデヒド基を洗い流して下さい。細胞の一部は生きていますから、緩衝液を用いて、しかも浸透圧に留意しなければなりません。0.1Mリン酸緩衝液(220 mOsm位)で洗う人、その緩衝液に0.1M〜0.2Mのショ糖やグルコースを加えて洗う人など様々です。ショ糖やグルコースでは0.1Mを加えることによって、およそ100 mOsmほど浸透圧が上がります。とりあえずは、0.1Mの緩衝液で洗うか、0.1Mのショ糖を加えた0.1Mの緩衝液で洗って下さい。アルデヒド基の洗浄が不足すると、オスミウム固定の時に膜系にアーチファクトが生じるという報告があります。一晩くらい洗うと良いでしょう。その場合は、帰宅する前に、10分間x6回程度洗ってから、少し多めの緩衝液(またはショ糖を加えたもの)に漬けてください。

 

 

11)オスミウム後固定について:        目次に戻る】

 1%または2%の四酸化オスミウム液で固定します。オスミウムの結晶を2%または4%になるように蒸留水に溶かして置いて「オスミウム保存液」(密閉して冷蔵庫保存)としておき、使用直前に緩衝液で希釈して固定します。0.1Mリン酸緩衝液で良いでしょう。1%溶液で充分な固定が期待できます。少し大きな試料や、浸透が遅い試料(厚い被膜を持ったもの、等)では2%を使って下さい。

 2%オスミウム保存液と0.1Mリン酸緩衝液を1:1で希釈して1%オスミウム使用液を作ると160 mOsmの非常に低張な液になります。試料サイズが充分小さければこれでも問題は起こりませんが、気になるときには0.2Mのショ糖を加えた0.1Mリン酸緩衝液を使ってみて下さい。

 試料の厚さが0.5mm以下ならば1時間固定します。厚さが1mmでしたら2時間浸漬します。それ以上はあまり良くありません。オスミウムは脂質をよく固定しますが、細胞質を破壊することもあります。アルデヒドで固定されたFアクチンも、オスミウムで破壊されます。長すぎるオスミウム固定(過固定)は避けて下さい。温度は、4℃または冷蔵庫内で行いましょう。

 神経組織(ミエリンが多い)や副腎皮質(脂質が多い)などでは、他の組織に比べてオスミウムの浸透が遅くなったり、また未固定部分が生じたりします。やや長めの浸漬時間(といっても最長2時間)、やや多めのオスミウム液などに注意をして下さい。それ以上の時間が掛かりそうなときには、試料サイズを小さくして2時間以内で試料全部が(内部まで)黒化するようにしてください。

 オスミウム液が触れた組織はすぐに黒化します。黒化と同時に、瞬間的に膜の半透性や酵素活性などはなくなります。オスミウム固定を終えた試料には、もはや浸透圧やpHの心配は全く不要になりますから、あとの洗浄は蒸留水でも緩衝液でも構いません。お好きにして下さい。

 

 

12)固定条件の記録について:          目次に戻る】

 初心者は、特に固定条件の記録を詳細に行って下さい。写真の良し悪しを判断する時に、固定条件の記録が重要になってきます。動物種・飼育方法・雌雄・体重・動物の状態(飢餓など)・麻酔方法の詳細・脱血液の処方箋・脱血時間と灌流液の量・灌流固定液の処方箋・灌流固定の時間と固定液の量・細切の方法と大きさ・浸漬時間と温度・洗浄液の処方箋・洗浄の回数と時間・・・、などです。特に使用する溶液は、単に何%液と記録するのではなく、2%○○ xx ml、2%△△ yy ml、0.1Mリン酸緩衝液 □□ ml 等と詳細に処方箋を残しておくと良いと思います。

 

 

13)おわりに                  目次に戻る】

取りあえず、表面的な事柄のみを書いておきました。「オールマイティの固定液はない」ということを頭に入れておきましょう!

 

 
質問・ご批判はこちらまで→mann1952@gaea.ocn.ne.jp
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